事例

本校の実例ではありませんが、教育相談について知っていただけるよう参考例を掲載しました。

相談事例1 教室からの飛び出しについて (小学校3年生)
「3年生のAさんが急にパニックになって教室から飛び出してしまい、
授業に参加できないことが続いています。どうしたらよいのでしょうか」という相談

まず、Aさんの記録を取り、具体的に説明できるようにします。
そして、気になる行動だけでなく、行動の前後に着目します。

  子どもの様子
文を抜き出して書く、線を引くなどの先生の指示があったとき
行動 プリント類を破って大きな声を出して教室から飛び出す
結果 その授業が終わるまで、運動場の隅でボールを蹴る


 教室から飛び出したAさんの行動には、先生の指示が分からず、クラスメイトと同じことを
できない辛さから逃れる「逃避・回避」の機能があったのではないか、と考えられました。

 そこで、「1.先生の声掛けや指示がうまく伝わっていないのではないか」
「2.聞いていても、指示をよく理解できていないのではないか」という
2つの仮説を立て、次のような工夫をすることにしました。

 1.指示や声掛けについては、
  ・注意を促す 〔例えば最初に「今からお話しします」と声を掛ける〕
  ・短く、1つずつ話す〔例えば「まず、○○します」と一動作だけ指示する〕
  ・黒板にキーワードを示す(視覚支援) 〔さらに「ヒントはこれ」と指し示す〕
  ・質問タイムを設ける(援助を求めることの学習)
〔さらに、例えば「みんなのために質問してくれる人はいませんか」と声を掛ける〕
  というように伝え方の工夫をすること。

 2.理解を助け、文章を読んだり線を引いたりするなどの行動を取りやすくなるように、
1時間で学ぶ分量の文章をワープロで1枚のプリントにして、学習対象を視覚的に
絞り込むこと。(学習環境の工夫)

 授業での工夫により、Aさんは学習に取り組めるようになりました。その結果、
ほめられる場面が増え、学習に対する自信がついたことで、教室から逃避する必要が
なくなったのでしょう。その後の飛び出しはほとんどなくなったとのことです。

相談事例2 整理整頓が苦手で、忘れ物の多い子どもへの支援 (小学校2年生)
「Aさんは毎日忘れ物をし、忘れ物に気がつくと、いてもたってもいられないようです。先日は水泳バックを忘れたのに気づいて、休み時間に黙って家に取りに帰り、大騒ぎになりました。また、整理整頓ができず、よく物をなくします。朝5本あった鉛筆が帰るときには全部ないといったこともありました。Aさんには、『気をつけなさい』という指示だけではうまくいきません。」という相談

興味あることに気をとられ、必要な注意の集中や持続がうまくいっていないことが考えられます。そこで、自分で気をつけて取り組めるような工夫を提案しました。

1.机の横に手提げかばんをつって、勉強が終わった教科書は、その手提げかばんに入れる。机の中からは、次の教科書を出す、帰り支度の時には、手提げかばんからランドセルに中身を移す、というように出し入れの流れを一方向にしてわかりやすくする。

2.次に、机の上に教科書やノート、筆箱を置く位置を決めておく。机の上の並べ方をイラストにして、机の上に貼っておく。

3.また、片付けを促す言葉は、「ちゃんと片付けなさい」ではなく、「鉛筆を筆箱にしまいなさい」などと具体的に言う。

4.忘れ物対策には、持ち物チェックシートを活用する。これには家庭の協力も必要。また、ものを忘れたときは「先生、○○を忘れました。貸してください」と助けを求めるなど、対処法を学ばせる。そして、その対処ができたらしっかりほめてあげる。

 先生は「がんばるマンカード」を作り、帰る前、Aさんと一緒に一日を振り返り、その日のがんばりをほめ、ごほうびにキャラクターのシールを貼ることにしました。
 この取り組みを続けることで、机の上がきれいになり、Aさんが忘れ物をすることはほとんどなくなりました。そして、成功体験を重ねることを通して、「もう忘れ物はしない」と自信がもてるようになりました。

参考:大阪市教育センターhttp://www.ocec.jp/center/index.cfm/1,html